人間の寝相は大きく分けると、仰向け、横向き、うつ伏せの3種類。

良い眠りのためには、どの寝相がもっとも適しているのか、気になりますよね?

実際のところ、ほとんどの人は寝ている間に「寝返り」をうつので、厳密にどれか一種類の寝相で寝ているわけではありません。

また、どんな寝相であれ、本人が快適に眠れているなら、それに越したことはないでしょう。

しかし、最近の研究で、「横向き」で寝ることは、身体や脳にとって良いことが多いということが明らかになってきています。

この記事では、横向きで寝ることのメリットとその理由、そして、横向きで寝る際の注意点についてご説明します。

横向きで寝るのが良いとされる理由

一言で寝相と言っても、単なる身体の向きの話でなく、骨格や筋肉、内臓、呼吸、そして脳にいたるまで、様々な身体の働きがそこには関係しています。

そのため、ある面では横向きが優れているが、別の面ではその他の寝相のほうが適している、といったことも当然あり得るため、絶対的に「横向き」が一番良い、という話ではありません。

しかし横向きで寝ることが推奨される理由は数多くあります。

横向きで寝るメリット

  • 1. 背中と首に負担をかけない
  • 2. 気道が開くのでいびきをかきにくい
  • 3. 胃酸の逆流を防ぎ胸焼けを起こしにくい
  • 4. 脳にとって良い効果がある
  • 5. 大静脈を圧迫しないので心臓への負担が少ない(特に妊娠中の場合)

1. 背中と首に負担をかけない

まず、背骨が圧迫されないため、背中や首に負担がかからず、楽に寝ることができます。背中の痛みがある人には特に有効です。

2. 気道が開くのでいびきをかきにくい

いびきの原因は、寝ている時に舌の奥が重力によって喉の奥へと沈むことで、気道(空気の通り道)の入り口が狭くなることによります。場合によっては気道が塞がってしまうこともあり、そうなると睡眠時無呼吸症候群(SAS)と呼ばれ、身体に様々な悪影響を及ぼします。

睡眠時無呼吸症候群は、昼間の激しい眠気を引き起こす原因にもなります。
関連記事:昼間ものすごく眠くなる…毎晩ちゃんと寝ているのになぜ? – ねむるーむ

いびきや睡眠時無呼吸は、仰向けで寝ている場合に起こります。横向きで寝る場合は、舌が喉の奥に下がらないため気道が塞がれず、睡眠中の呼吸がスムーズに行えます。いびきをかきにくくなり、睡眠時無呼吸症候群の予防にもなります。

3. 胃酸の逆流を防ぎ胸焼けを起こしにくい

睡眠中に胃酸(胃液)が逆流して食道に炎症を起こし、胸焼けなどの原因となる「逆流性食道炎」。油や塩分の多い食生活が一般化した現代の日本人にも増えています。

横向きで寝ることで、胃酸の逆流を起こりにくくすることができます。

後述しますが、これに関しては、右と左どちらを下にするべきかで諸説があります。いくつかの研究で「右を下にして寝た場合のほうが逆流が起こりやすい」という結果が出ているため、一般に左を下にしたほうが良いとされることが多いです。しかし胃の形状も人によって異なるため、逆流のメカニズムも含めて未だ解明されていない部分も多いようです。

参考:
Effect of different recumbent positions on postprandial gastroesophageal reflux in normal subjects. – PubMed – NCBI
Body position affects recumbent postprandial reflux. – PubMed – NCBI
Are Lifestyle Measures Effective in Patients With Gastroesophageal Reflux Disease?An Evidence-Based Approach | Gastroenterology | JAMA Internal Medicine | JAMA Network
Does Lying on the Left Side Ease Heartburn? — Really? – The New York Times

4. 脳にとって良い効果がある

最近の研究で、横向きで寝ることが、脳の老廃物を取り除く効率を上げる可能性があることが指摘されています。

脳の老廃物が除去されずに蓄積されると、睡眠障害を引き起こす原因となり、アルツハイマーなど認知症の発症にも関与すると考えられています。横向きで寝ることでそれを予防できる可能性があります。

出典:Could Body Posture During Sleep Affect How Your Brain Clears Waste? – Stony Brook University Newsroom(ストーニーブルック大学 2015年8月4日)

現時点では動物(げっ歯類)を使っての実験結果とのことで、人間での効果についてはさらなる研究が待たれます。
動物にとっての睡眠は、単に身体を休ませるだけでなく、脳の情報を整理するためでもあることがわかっているため、寝る時の姿勢による脳脊髄液の流れ方の違いが、何らかの脳の働きに影響する可能性も十分考えられるでしょう。

5. 大静脈を圧迫しないので心臓への負担が少ない(特に妊娠中の場合)

妊娠中は、仰向けで寝ると、大きく重くなった子宮によって大静脈が圧迫されて血流が悪くなる可能性があるため、横向きで寝ることが推奨されています。

横向きで寝るデメリット

一方で、横向きで寝ることのデメリットもあります。

  • 1. 腕が圧迫されてしびれる可能性がある
  • 2. 顔のしわの原因となる
  • 3. ひざを丸めて眠るのは身体への負担が増える

1. 腕が圧迫されてしびれる可能性がある

横向きで寝ると、どうしても片腕が下に敷かれる体勢になるため、血流が圧迫されて腕がしびれることがあります。対策として、腕を圧迫しないように設計された横寝専用の枕が発売されており、人気を集めています。

2. 顔のしわの原因となる

横向きで顔を枕に押し付けて寝ると、シワの原因になる可能性があるため、美容を気にする方は注意が必要です。

3. ひざを丸めて眠るのは身体への負担が増える

横向きに寝た状態で、ひざを抱えるような体勢で身体を丸くして眠る人(胎児のポーズと呼ばれる)がたまにいますが、その場合、背骨が曲がって関節に負担がかかります。また、胃や肺が圧迫されて苦しくなる可能性があります。

仰向け・うつ伏せとの比較

どんな寝方にもそれぞれにメリットとデメリットがあります。仰向け、もしくはうつ伏せで寝る場合についても知っておきましょう。

仰向けで寝るのは、頭と首と背骨がきれいに並んで安定するため、骨格のためには最良の寝方だと言えます。
また、顔が押さえつけられることがないため美容の面でも最も優れています。

しかし、仰向けで寝ていると重力によって舌が喉の奥の気道のほうへと下がるため、いびきをかきやすくなり、睡眠時無呼吸症などを引き起こすことがあります。

臨床心理学者でアメリカ睡眠医学会の”The Sleep Doctor(睡眠博士)”ことマイケル・ブルース博士(Dr.Michael Breus)は、「いびきの問題がない限りは、仰向けで寝るのが最も良い」とツイッターでの質問に答えています。

反対に、うつ伏せで寝ることは、いびきや睡眠時無呼吸を防ぐ効果は高いですが、それ以外の面ではあまり推奨されていません。背骨が不自然に曲がってしまうことや、顔だけは横を向くことが多くなるため首への負担も大きいとされています。

右と左、どちらを下にして寝るのが良い?

人間の内臓は左右対称ではありませんので、右と左、どちらを下にしたほうが良いのか、気になる方もいるかと思います。

下になっているほうが圧迫されることは想像できますが、実際は眠っている間に無意識のうちに寝返りをうって左右のバランスを取っているのが普通です。

なので、どちらを下にするかは基本的にそこまで深刻に考える必要はありません。

ただし一般的には、どちらかといえば左を下にするのがよいと言われることが多いようです。

根拠としては、心臓と血管の構造と位置関係が挙げられるほか、肝臓などの臓器の位置も理由となっています。特に妊娠中は、医師から左を下にして寝るよう推奨されることもあるようです。

参考:Sleeping During Pregnancy

妊娠中の寝方については「シムズの姿勢(Sims’Position)」と呼ばれる方法が広く知られており、これも基本的に左を下にして横になるものです。

参考:シムズの姿勢 – Wikipedia

また、前述したとおり、逆流性食道炎に関しては未だ全てが解明されているわけではありませんが、右を下に寝たほうが胃酸が逆流しやすいという結果がいくつかの研究によって得られています。

まとめサイトや個人のブログなどで、たまに「左が正しい」とか「右のほうが良い」とか、逆に「右は危険です!」だとか、断言している記事を見かけますが、根拠となる論文や研究が全く示されていないものは、基本的に信用しないほうが良いでしょう。

人間の眠りについてはまだまだ解明されていないことも多いです。現時点で特に医師の指導などを受けておらず、日常生活にも支障が出ていないのであれば、左右どちらで寝るかは特段意識する必要はないと考えます。

横向きに寝るときの注意点

前述したとおり、横向きで寝ることは背骨に負担をかけないというメリットがあります。

しかし、骨格全体のことを考えると、頭と首と背骨がまっすぐ揃いやすい仰向けのほうが良いとされます。横向きの場合、枕の高さや角度によってはまっすぐにならないことがあるのです。

それを防ぐためには、横向きに寝る時の枕に気をつける必要があります。

横になった時に、背骨と首と頭がきれいに水平になるように、枕の高さを合わせましょう。

横向きで寝るときの快適な枕の高さ

枕が柔らかすぎて頭が沈んでしまうのも、首が曲がってしまうので良くありません。枕の硬さも重要なポイントです。

さらに快適さを求めるなら、腰(ウエスト)の部分に小さな低い枕を敷くことで、腹部が曲がるのを防ぐことができます。
そしてひざの間にもう一つ枕を挟むと、上側になったほうの足が楽になります。

横向きで寝るときの快適な姿勢

まとめ

以上が、横向きで寝ることのメリットとその理由、デメリットと注意点になります。

まとめると…

・いびきや睡眠時無呼吸などの問題がない場合は、仰向けがベスト。問題がある場合は、対策と予防のために横向きが有効。
・脳のためには横向きが良い可能性があり、研究が行われている。
・横向きの右か左かはそれほど気にする必要なし。ただし一般的には左が良いと言われることが多い。
・うつ伏せはあまり良い点がない。

参考にしていただければ幸いです。

とは言え、寝る時の姿勢を意識しすぎて、緊張して眠れなくなってしまっては元も子もありません。

あくまで知識として持っておき、基本は自分がもっとも快適に眠れる姿勢で寝るのが良いと言えるでしょう。