昼寝をするレッサーパンダ

会社で、学校で、昼過ぎにやって来る、ものすごい眠気…! 困りますよね。

昨日あまり眠れなかったから? …それならあり得る話です。

しかし中には、「毎晩ちゃんと寝てるのに、昼間眠くなる」という人もいるかもしれません。

その場合、何らかの理由で睡眠の「質」が下がっていると考えられます。

昼間の眠気が耐えられないほどひどい場合、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の可能性もあるため注意が必要です。

この記事では、昼間に眠くなる理由と対策法、そして睡眠時無呼吸症候群についてわかりやすくご説明します。

昼間に眠くなるのは実は自然なこと

昼過ぎに眠くなる理由として、昼食をとった後なので消化のために血液が胃に集まって脳に行かなくなるから、という説がありますが、それは正しくありません。

確かに、食事の内容によって血糖値が急激に上昇した場合、血糖値を正常に保とうとする体内のホルモン分泌の働きによって、眠気が起こるという説があるのは事実ですが、因果関係はまだ完全には解明されてはいません。

昼食をとった場合ととらなかった場合の午後の眠気を比較した1983年の研究では、食事が眠気の原因になるという証拠は認められなかったとのこと。昼食をとらなくても、昼過ぎには眠くなるのです。

参考文献:Postprandial sleepiness: objective documentation via polysomnography. – PubMed – NCBI

実際は、もともと人間に備わっている体内時計(生物時計)のリズムが、昼間の眠気に大きく関わっています。

人間の体内時計はサーカディアンリズム(circadian rhythm)と呼ばれる約24時間周期のリズムで動いており、それをもとに「眠くなる時間」や「目覚める時間」を脳が調整しています。

また、サーカセミディアンリズム(circasemidian rhythm)という半日周期のリズムもあり、その周期で眠くなることがわかっています。

つまり、夜に眠くなるピークの時間から半日後にも眠気がやってくるのは自然なことで、それがちょうど昼過ぎの時間帯にあたるというわけなのです。

眠気の推移のグラフ
眠気の推移のグラフ(SCN Controlled Circadian Arousal and the Afternoon “Nap Zone”より1994年 Broughton & Mullingtonの図を参考にねむるーむが作成)

現代に生きる私たちは、夜にまとめて寝て、昼間はずっと起きているのが当たり前に思っていますが、それは文明の進歩にあわせて適応されていった社会生活のためのリズムです。人間はもともと昼寝をする生き物なのです。

会社や学校に行くようになると昼寝をすることは難しくなり、現代はこれが当たり前になっているため、ほとんどの人は昼間の眠気にも耐えられます。夜にしっかり質の高い睡眠がとれている人なら、全く気にならないという人も多いでしょう。

しかし、人によって、また時と場合によっては、昼間にとても耐えられないほどの眠気に襲われることがあります。

耐えられないほどの昼間の眠気は別の原因が潜んでいる可能性も

大あくびをするヒョウ

昼間の眠気が生活に支障が出るくらいひどい場合は、単に体内時計の周期による理由だけでなく、別の原因が潜んでいる可能性があります。

前日の夜にあまり寝ていない場合

いつもに比べて前日の夜に「寝ていない」「眠れなかった」という自覚がある場合は、原因がわかりやすいです。

人間の睡眠には、前回の睡眠時の不足を、次の睡眠で補うという仕組みが備わっています。

通常、人間の睡眠は約90分周期の「睡眠周期」が4~5回繰り返される構成になっています。90分間の睡眠周期の間に、深い眠りである「ノンレム睡眠」と浅い眠りである「レム睡眠」が交互にあらわれ、周期を繰り返すほど「レム睡眠」の割合が増えていきます。

ものすごく簡単に言うと、ノンレム睡眠は「脳が休む睡眠」、レム睡眠は「身体を休めて脳は目覚める睡眠」です。眠りについたらまず最初に深い「ノンレム睡眠」でしっかり休んで、時間が経つにつれて起きやすいように「レム睡眠」が増えていくという仕組みになっています。

前回の睡眠で十分に休みが取れなかった場合、次の睡眠で前回分を取り戻すために、深い眠りが最初に集中的に発生します。

眠気がやってくるタイミングは先ほどご説明した体内時計の半日周期によるため、前日の夜に寝不足の場合は、次の日の昼過ぎにそれを補うための強い眠気がやって来るというわけです。

ちゃんと寝ているのに昼間の眠気がひどい場合は要注意!

注意する必要があるのが「自分では毎晩ちゃんと寝ているつもりなのに昼間にものすごく眠くなる」という人。

この場合、自覚がないだけで、実は睡眠に問題が発生している可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群とは

本人に自覚がない睡眠障害の代表的なものが「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome/SAS)」です。

その名の通り、睡眠中に呼吸が止まってしまう状態が断続的に発生する病気です。10秒以上の無呼吸もしくは低呼吸(呼吸量が通常の半分以下になる)が、1時間に5回以上発生する場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

呼吸が止まる理由として最も多いのが、仰向けで寝た時に気道(呼吸する際の空気の通り道)が狭まり塞がってしまうことによるもので、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と呼ばれます。肥満などにより首周りの脂肪が多いことや、あごが小さいこと、舌や扁桃腺が大きいことなどが原因となりやすく、大きないびきをかくのも特徴です。

閉塞性睡眠時無呼吸と正常時の比較
閉塞性睡眠時無呼吸と正常時の比較

厄介なのは、睡眠中に発生するため本人は気づけないことです。

同居している家族がいる場合は、いびきの様子などから判別できることもありますが、一人暮らしの場合はどうしても発見が遅れてしまいます。

また少数ですが、睡眠中に脳が呼吸の機能そのものを一時的に停止してしまうタイプの中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)も存在し、こちらはいびきをかかないためより発見が難しくなります。

だからこそ「昼間の眠気」がひどい場合は、自分自身で睡眠時無呼吸症候群の可能性を疑う必要があるのです。

睡眠時に無呼吸になっているということは当然、眠りの質が低くなっており、ちゃんと寝ているつもりでも十分な休息が取れていない状態です。
そのため昼間にものすごい眠気が押し寄せます。

日本では一般住民910人を対象とした調査で、男性の3.3%、女性の0.5%が閉塞性の睡眠時無呼吸症候群という報告※がありますが、実際にはもっと多いと考えられています。

治療をせずに放っておくと、心臓発作、脳梗塞、糖尿病、心不全、肥満、交通事故など、さまざまなリスクが増大することがわかっています。

現在では専用の呼吸器具などを用いた効果的な治療法も進んでいますので、少しでも疑いや心配がある場合は、早急に専門の医師に相談することをおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群の治療と予防法

閉塞性の睡眠時無呼吸のメカニズムは、仰向けで寝ている時に、舌の奥の部分(舌根)が重力によってのどの奥へと下がり、気道を塞いでしまうことから起こります。

健康な状態であれば、舌が下がっただけで気道が塞がることはありません。しかし、肥満などによって舌や首周りに余分な脂肪が増えている場合や、あごが小さくもともと気道が狭い人の場合、このような閉塞性の無呼吸が起こりやすくなります。

症状によって最適な治療法は異なる

治療の方法としては、まずは禁酒や寝るときの向き、肥満が原因の場合は減量など、生活習慣の改善を行います。症状が軽い場合はこれだけでも大きく改善することがあるそうです。

重症の場合は、専用の器具を使った治療や、手術などが行われます。

現在、日本でもっとも普及しているのはCPAP(シーパップ/Continuous Positive Airway Pressure)と呼ばれる装置を使った治療法(CPAP療法)です。

CPAPとは、鼻に専用のマスクを付けて眠り、エアチューブで気道に空気を送り込んで圧力をかけることで、気道が塞がるのを防ぐ仕組みです。

CPAPイラスト画像
CPAP

日本の医療機関ではCPAPは保険診療の対象になっており、レンタル(月額4,000~6,000円程度)で使用することが一般的になっています。

その他、マウスピースを着けて寝ることであごの位置を調整し、気道が塞がるのを防ぐマウスピース療法なども行われています。

症状の度合いや原因によって最適な治療法は異なります。まずは専門の医師に相談しましょう。

睡眠時無呼吸症候群についてより詳しく知りたい方はこちらのサイトがおすすめです。
睡眠時無呼吸なおそう.com – 睡眠時無呼吸症候群のポータルサイト

生活習慣の改善は睡眠時無呼吸の予防になる

閉塞性の睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣を改善することである程度の予防効果が期待できます。

特に原因となりやすい「肥満」にならないよう、日頃から食生活に気をつけることは重要です。

また、過度の飲酒はのどの筋肉の緊張を緩めるため、気道が塞がりやすくなります。
喫煙も気道のむくみの原因となり、無呼吸を起こしやすくします。

これらに気をつけて健康的な生活をおくることが、睡眠時無呼吸症候群の予防に繋がります。

まとめ

昼間の眠気は睡眠時無呼吸症候群の可能性があり、治療せずに放っておくと重大な病気や事故を引き起こす原因となります。

自分では睡眠中の症状に気づくことは難しいため、昼間の眠気を判断基準として、少しでも心当たりや不安があれば早目に医師の診断を受けるようにしましょう。